葵のひとり感想戦

アニメやら漫画やらについて思ったことをぽつぽつ

PSYCHO-PASSは神アニメ

…だと思うんですよ。

 

全てをシビュラシステムに管理された世界で、自分の人生をそのままシステムに委ねている世界。

 

正直私はこの世界の設定、とても気持ち悪いものだと思っています。

別に人生順風満帆で、自分の運命は自分で切り開くもの!という思考では全くないのですが、システムに何もかも従うのってちょっとつまらないですよね。

家のレイアウトを毎日好きに変えられるのも、便利なようで私のような同じ景色に慣れたいタイプからすると落ち着かないですし。

嫌な世界だな、と思っています。

 

でも生まれたときからそんな世界だったら?

もうずっとそんな世界で暮らしているのだとしたら?

…そしたらもう、嫌だなとかおかしいなとは思わないでしょうね。

 

主人公の常守も最初はそんな普通の「世界の住人」。

優秀ですが、基本はシビュラに従いシビュラのある世界が当然と疑わない、あくまで普通の人間の感覚ですね。

 

それが、公安局に入りある人物が引き起こす事件の捜査をするうちに、どんどん考え方が変わります。

 

この話の流れがまず面白いんですよね…当たり前の世界のルールに疑問を抱く、しかもそのルールに従って仕事をする立場の人間が。

 

更に何より面白いと思うのが、シビュラを疑うきっかけとなる槙島聖護の存在。

 

免罪体質というシビュラに認知されない槙島は、その特性を生かして数々の事件を手助けし、自らも手を染めて殺人を繰り返します。

膨大な知識と思考の深さ、カリスマ性を活かして人を操り、シビュラに背いて世界を変えようとする槙島。

彼を追う中で、シビュラシステムという当たり前の存在の謎に迫ることになり、疑念を抱くことになるんです。

 

単純に正義と悪の対立ではなく、正義側の土台となるべき概念を揺るがせ、揺らいだ土台の上でなお自分の信じる正義を貫く。

シビュラを利用し、シビュラに利用され、信頼し合わない相手と手を組んだり、とても一筋縄ではいかない設定ですよね。

 

正義とは何なのか、善悪とは何なのか、世界はどうあるべきなのか、という様々な難しい問題(というか答えのない問題、ですよね)がちりばめられており、本当に考えながら観る作品だと思っています。

 

…中でも私は槙島のこの言葉が好き。

 

「僕は、人の魂の輝きが見たい」

「それが本当に尊いものだと確かめたい」

「だが己の意思を問うこともせず、ただシビュラの神託のままに生きる人間たちに、果たして価値はあるのだろうか?」

 

私がこのPSYCHO-PASSの世界に感じる違和感というか嫌悪感、の理由はまさにこの言葉通りだと思っていて。

人間は考えられる脳がある、個人個人の感覚や価値観の違いがある、その多様性をお互いに受け入れながらひとつの社会を作り、ひとつの世界を作っている。

それなのに、何も考えずただシステムの言いなりになり、それを疑いもせずにいる人間たち。

それって人間ができるとても尊いものをすべて捨てているように思えちゃうんですよね。

 

人の魂の輝き、というのを今の私が常に持っているかと言われると自信もって答えることはできませんが、それでもこの世界の人たちよりかは自分の人生のことを自分で考えているし、その結果がたとえシステムが出した答えの方がよかったとしても、後悔するようなことになったとしても、納得しているし責任を持っています。

 

槙島がどういう意図で人の魂の輝きと言ったのかはわかりませんが、私にとってのそれはそういった各自の思考やそれに基づく行動、衝突したり協力したり、後悔したり満足したり、そういったプラスマイナスの事柄に直面したときに生まれるものだと思っています。

 

綺麗に輝くだけでなく、暗かったり汚かったり滲んでいたりもあるかと思います。

でも、いろんな輝きが至るところで生まれるからこそ世界は面白いし深みが増すのだと思っています。

 

槙島の方法はいい方法とは到底言えませんが、彼の言うことは間違っているとはとても言えないんですよね。

他の数々の名言も、引用を用いたりしてちょっと難しいですがきちんと聞いてみるとどれも「確かにそうかも」と思えてしまうようなことばかり。

完全悪とは言えない悪者キャラとして人気な彼ですが、それも頷けますよね。

 

そして頷くだけでなく、今この幸いにもシステムに完全に管理されたわけではない世界に生きる人間として、もう一度考えなくてはいけないんだと思います。

 

将来、必ずAIが台頭して人間の仕事は大きく減るでしょうし、その便利な面だけを見て享受する人も必ず大勢いるでしょう。

でもあくまでもシステムは人間が使うものです。

人間が負担を減らすためにシステムに助けてもらう、という程度であるべきだと思います。

システムに全てを任せてしまったら人間はいつか必ず思考を止めてしまう。

それは避けなければならない。

 

私が生きているうちにどこまで世の中のシステム化が進むかはわかりませんが、後世に伝えていきたい作品ですね。

 

 

…ちなみに、私の推しは霜月です。

1期では学生でしたが、2期で異例の未成年で公安局に採用される有望な人材です。

1期を経て、シビュラの正体を知った常守、槙島の事件で変わってしまった1係の面々の中で、あくまでも「この世界の普通の人間の感覚を強く持っている」人間として1係に入るのが霜月。

シビュラは信じてはいけない、とする1係の面々に対してシビュラは絶対と信じて疑わない霜月の存在は1係でとても目立ちます。

 

私の周りは霜月の評判は良くないですが、世間と少し違う感覚を持ち始めた1係の中に世間の感覚を強くもつ霜月がいるからこそ、1係の信念や正義が生きるわけですし、それこそ1係の命の輝きがより際立つようになっていると思うんです。

そして霜月も、決して自分を見失わない。

霜月は霜月で、ちゃんと命を輝かせて生きているんです。

 

私の中でPSYCHO-PASSはやっぱり神アニメでした。

定期的に見直したいし、その都度考えたい作品です。