葵のひとり感想戦

アニメやら漫画やらについて思ったことをぽつぽつ

漫画【違国日記】を読んで

こんにちは。

 

前回に引き続き、漫画の感想です。

 

以前より、【違国日記】を読んでいます。

【さんかく窓の外側は夜】などで知られるヤマシタトモコさんの作品です。

ヤマシタトモコさんと言えばBL作品のイメージではあったのですが

この違国日記ではBLではない世界を描いています。

 

ざっとあらすじをお話しすると

中学校の卒業を目前に控える朝は、不慮の事故で両親を突然亡くしてしまいます。

親戚中で誰が引き取るか、たらい回しとも言えるやりとりがありましたが

それを見るに堪えなかった母親の妹、つまり叔母の槙生は朝の引き取りを申し出ます。

しかしこの槙生、極度の人見知りで職業は小説家。

そして生前の姉、もとい朝の母親とは犬猿の仲とも言えるものでした。

 

しっかり者で「こうすべき」と型にはめがちな亡き母のもとで育った朝は

正反対の槙生に戸惑いつつ、彼女の話す難しい日本語をなんとか理解しようと

ノートに書き留めたり何度も思い返したりな毎日。

 

「両親を亡くした可哀想な子」と思われるのも嫌だけど

実際両親はもういないし、槙生はよくわからない異国の言葉のように話すし

周りは恋愛しているのに自分には好きな人がおらず

大きな砂漠の中にぽつんとひとり取り残されたような感覚を覚えます。

 

それでも親友えみり他友人との交流や、槙生の数少ない友人との交流、

高校で始めた軽音楽部での活動などを通して

朝は朝なりにいろんなことを考え、悩み、怒り、感じていきます。

 

現在8巻まで単行本が発売中。

絵もとても綺麗で読みやすく、とても考えさせられる作品です。

 

 

そしてこれ以降は少しのネタバレを含みながら

登場人物ごとにあてたわたしの感想です。

 

まず、朝。

彼女はとても素直で思ったことをすぐ口にする、元気で普通の高校生。

両親を亡くしたけれど、それを機に槙生と出会ったのもあり

これまで普通に過ごしてきた日常の細かいところに気づき始めます。

物語は彼女のモノローグをつけながら進んでいきます。

大人になった彼女がどういう人間になるのか、とても楽しみです。

 

槙生。

いわゆる社会不適合者のような描かれ方ですが、彼女は彼女の世界を

確固たる覚悟を持って作り、守っている印象を受けます。

とても自由なように見えるけど本人はがんじがらめに感じていたり

自分の足りないところを自覚しているからこその苦悩も感じられます。

個人的にとても好きですね。考え方とか感じ方とか、

流石小説家というのもありますが、見習いたいなと思うところがたくさんあります。

 

朝の母、槙生の姉。実里。

槙生には高圧的な態度をとっていましたが、彼女は彼女で

しっかり自分の世界と考え方を持った女性です。

「こうあるべき」の思考が強いせいで槙生とは衝突しますが

彼女が本当はどういう人間なのかというのはまだ読めません。

(描かれるのかどうかもわかりませんが…描かれない気がする…)

個人的な話ですが、わたしの母親も割と型にはめた生き方をしつつ

させようとするタイプで、長いこと「こうあるべき」に苦しめられたので、

あまりいい母親には映ってきません…

 

えみり。

朝の親友で、はっきり言って美人です。

学校でも男子から相当モテているようですが、本人はどこ吹く風…

というのも、彼女は実は同性愛者。

女性が好きで、実際に塾で知り合った女の子とお付き合いしています。

ただ、それを朝には言えず。朝は同性愛なんて全く頭になく

「恋愛」といえば男の子のことを好きになることと考えている節があり

どうしても打ち明けることができないのです。

朝のなんてことないはずの一言に傷つき、一線を引きますが…

えみりはわたしの近しい人に重なります。

その人は男性ですが、男性が恋愛対象。

長い付き合いですがそれを打ち明けてくれたのは最近で

打ち明けたときもとても言いづらそうに、目も合わせず顔も見ず…

といった具合でした。

そういうカミングアウトをするのって本当に勇気がいることなんだなと

わたしはそのとき思ったので、えみりを見ているとその人のことを思い出します。

 

 

他にも魅力的なキャラクターが出てきては各々の関係性だったり

それぞれの考え方を丁寧に描いている作品です。

 

絵がさらっとしているので、その調子でさらっと読めてしまいそうですが

ひとつひとつのセリフに込められた思いだとか

多様性を感じさせるいろんな展開に都度立ち止まって考えたくなります。

 

同性愛の件も、わたしはたまたま身近にいましたが

いいか悪いかという問題ではなく、一度自分がどう感じるのかを

考えるきっかけになるんじゃないかなと思いました。

 

槙生の言葉を選ぶ様子とか、まだ成長過程にある子どもと話すときに

考えなしに言葉を使ってはいけない、影響させてはいけないというような

とても慎重になっている様子とか、何も考えずに読むこともできますが

考えてみるととても難しいですよね。

親ではないから変に影響を与えないようにと気を遣うべきなのか

親であっても自分に思考に子どもを染めてはいけないんじゃないのか

でも結局は子どもは身近な存在からの影響1番受けるだろうけど…

答えがないからこそ、どこまでも考えは深まりますし

自分にとって納得できる解が出るまでじっくり考えるというのもいい経験です。

 

 

日常の些細なことから人生の大きなテーマまで、

一度立ち止まってひとつずつ真剣に考えるきっかけを

【違国日記】を読んで作ってみませんか?